『作兵衛さんと日本を掘る』は、昨年2月に全国の映画館での公開を終え、これから自主上映をと思った矢先に、コロナで難しくなった。もちろん私だけではない。様々な方が同じ思いをしている。感染対策に気をつけながら上映会を開いて下さった方には、心から感謝だ。この状況の中だからこそ、多くの方に観ていただきたいと、DVDパッケージを制作した。今を生き抜くパワーをもらえると信じている。
たくさんの方に感動していただいた本編には、目や耳の不自由な方のために、バリアフリー版(音声ガイド・字幕)をつけた。以前にも何度かつけたことはあるのだが、今回は本当に目からうろこだった。 当事者の方たちにモニターをお願いし、その意見を聞きながら作業を進めたからだ。
さて特典映像だ。 まず、作兵衛さんの絵とじっくり向き合っていただくため、作兵衛事務所所蔵の原画約20点を収録。全体から細部にいたるまで堪能できる。絵の美しさにドキドキするとともに、地の底の過酷な労働と今、を考えざるをえない。
そして本編にはいりきらなかった、3人の貴重な証言。 元おんな坑夫の橋上カヤノさん。初めて坑内に入った時のこと。そして夫は戦争にとられ、たくさんの子どもを抱え、高い金を稼ぐために、“穴の穴”にまで入って働いたこと。言葉はわからなかったが朝鮮人坑夫の人たちが優しかった、と。
菊畑茂久馬さん。日本を代表する前衛画家だ。世界的な評価を受けた20代の終わり、作兵衛さんの絵と出会い、それから20年間、自分の絵を描けなくなってしまった。その経緯。茂久馬さんの喋りは圧巻で切ることができなかった。生きること、働くことと表現することの本質と、真摯さをつきつけらる。最後に、いやー喋りすぎたと、てれくさそうな笑顔が素敵だ。
元常磐炭田・炭坑夫の渡辺為雄さん。自宅の敷地内に、自分で作った線路とトロッコがある。動かして見せるときの得意そうな顔。
カヤノさんは撮影中に105歳で亡くなり、茂久馬さん、為雄さんも昨年相次いで亡くなった。こういう方たちの証言を残しておくことができて本当によかった。
今年は、東日本大震災と原発事故、筑豊の元炭坑夫、山本作兵衛の残したものがユネスコ「世界の記憶」に登録されてから10年。《炭鉱を知ると、日本が見えてくる》と改めて感じている。
小さな解説ブックレットも封入、大変充実したものになった。 価格は4,500円(税抜)。映画の公式サイトhttps://www.sakubeisan.com/ やアマゾンから購入できます。
そして最後に、お願いです。というかSOSです アマゾンDVDで、『作兵衛さんと日本を掘る』を検索すると、なぜか「女子大生 偽処女」というエロDVDが同じカテゴリーとして、必ずセットで表示される。 訳のわからないまま、そのDVDの説明を読むと、土地成金の飯盛作兵衛なる人物が登場する。笑うに笑えない話。 アマゾンの担当者と話したが、正確な検索結果のシステムなので、結論としてはどうしようもないと。
皆様に買っていただき、違う流れができれば、『作兵衛さんと日本を掘る』は、「女子大生 偽処女」とのセットから抜け出せるかもしれない。 よろしくお願いいたします!
添付は、DVDジャケットと解説ブックレット。描く作兵衛さんと妻のタツノさん。撮影は広川泰士さん。写真界の大御所である広川さんですが、若い頃、筑豊を歩き、作兵衛さんの写真を撮ったことが、プロの写真家を目指す出発点であったとうかがいました。そして橋上カヤノさん、菊畑茂久馬さん、渡辺為雄さん。人生は、本当にいろいろあります。 アホな政治家どもと、コロナに負けてはなるかと、改めて思ったのでした。
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